炎症性腸疾患
炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease:IBD)とは長い期間で慢性的に炎症が持続する腸炎の総称ですが一般的には、下記にてご説明する潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病(CD)の2つの病気を指します。
IBDの原因は今のところ厳密にはわかっておらず国から難病に指定されていますが、主には免疫異常による慢性の腸炎と考えられています。
潰瘍性大腸炎やクローン病などのIBDは 一過性の感染などの腸炎と異なり良くなったり悪くなったりを繰り返すため、よくなっても悪くならないよう(寛解期)お薬の継続的投与を要します。寛解期が継続できれば通院して頂き継続的に治療を受けながら普通の日常生活を送って頂くことが可能です。
当クリニックのIBD治療の目標は、患者さんに負担の少ない治療から始めて病勢を抑えるだけでなく治療の副作用も含めて方針をよく検討し、食事や就労/就学、趣味、結婚や挙児までできるだけ普通に行って頂くことです。
IBDの患者さんの皆さん、夢や目標をあきらめず当クリニックとともに潰瘍性大腸炎やクローン病に立ち向かっていきましょう!
潰瘍性大腸炎(UC)
潰瘍性大腸炎とは潰瘍性大腸炎(Ulcerative Colitis:UC)とは、原則的に肛門からつながり大腸に限局して慢性的な炎症・潰瘍が起こる病気です。
潰瘍性大腸炎は範囲によって肛門の真上の直腸に限局する直腸炎型、肛門からS状結腸や下行結腸までつながる左側大腸炎型、それ以上の範囲の全大腸炎型の3つに分類され範囲によって治療の選択が変わるため、当クリニックは患者さんの病変範囲の把握が重要であると考えています。
潰瘍性大腸炎の症状
発症時は長く続く下痢、血便、白い膿の排泄などが多く、進行すると便回数や出血の程度が増悪し腹痛、便切迫感などが伴うようになり、重症になると腹痛が強くなり発熱を認め、重症度に相関して関節痛や皮膚障害などお腹以外の症状を伴うこともあります。また多くは重症度に相関しませんが、お腹以外の合併症として特殊な胆管炎や目の病気が合併することがあります。
当クリニックでの潰瘍性大腸炎患者さんの診察
病状の把握と副作用のチェックなどのため、診察の前に採血を受けて頂いています。採血結果は当日に出るシステムになっています。
調子が悪ければ治療の変更を検討するため、必要ならば受診当日に下剤を服用せず浣腸のみを受けて頂き簡易的に観察できる範囲のみを大腸カメラで観察し、その結果で治療法を決定するようにしています。再燃した場合はいかに早く大腸カメラで範囲や炎症の程度を把握し、いかに早く対応するかが潰瘍性大腸炎を悪くさせないコツであると考えています。
安定した状態を維持できている患者さんへは、難病更新の時期にあわせて病状を把握するためとポリープやがんなどができていないかをチェックするため1年に1回大腸カメラを受けて頂くように推奨させて頂いています。また潰瘍性大腸炎の患者さんとはお付き合いが長くなるため、他の臓器にも病気ができても早く対応できるよう1年に1回の胃カメラと腹部エコーも受けて頂くようお勧めしています。
潰瘍性大腸炎の治療法
潰瘍性大腸炎の治療は直接的に炎症を抑える5-アミノサリチル酸(5-ASA)から開始し、不十分ならば何らかの免疫を制御する治療が必要になります。当クリニックの潰瘍性大腸炎の治療は将来のことを考え安全なもの、中止できるものを優先して行うようにしています。
5-ASA製剤
潰瘍性大腸炎の治療の基本は患部に直接作用して炎症を抑える5-アミノサリチル酸(5-ASA)になります。病変の範囲により局所製剤(注腸や坐剤)と経口剤を組み合わせて治療を行います。5-ASAには4種類の経口剤(ペンタサ®、アサコール®、リアルダ®、サラゾピリン®)の他にも局所製剤(注腸や坐剤)も存在します。それぞれの製剤によって大腸への5-アミノサリチル酸の送達法が違うので、薬剤の選択のために大腸カメラによる病変の範囲の把握が大事になります。また安定した時期(寛解期)に入っても寛解期をしっかり維持するためには、いかに5-ASA製剤をしっかり服用して頂くかが大事であると考えています。
ステロイド
ステロイドは炎症を抑える作用が速やかですが一旦開始してしまうと急には中止できず、その間にクセがついてしまうことあり中止が難しくなり病状も難しくなることがしばしばあります(ステロイド依存性)。その間に多くの副作用(骨粗しょう症、血糖値上昇、感染症、満月様顔貌など)も出現し、患者さんの生活に支障をきたしてしまいます。ですので当クリニックでは潰瘍性大腸炎の患者さんへのステロイド投与は極力避け、投与しても可能な限り短期間にするよう努めています。また最近は吸収されず血液中にステロイドが移行しないためクセになることが少なく副作用も少ないブデゾニド製剤(経口剤:コレチメント®、注腸製剤:レクタブル®)が登場しましたが、病変の範囲によって治療成績が異なりますので範囲の把握が大事になります。
血球成分除去療法
血球成分除去療法(G-CAP)は血液を腕の静脈から体外循環させてカラムの中で血液をろ過し炎症の原因となる特定の血液成分(顆粒球・単球など)を除去することで効果を発揮する治療法で、薬剤を殆ど使わず強く免疫機能を抑制しない安全性の高い治療法です。1回の施行時間はおよそ1時間であり計10回(1週間に1~2回)行い、改善すれば中止できます。改善するも症状が残ってしまった場合は月に2回の維持治療も可能です。この場合も改善すれば中止できます。当クリニックではこの治療を可能な限り早期に、場合によってはステロイドを投与する前の段階で行うようにしています。この治療をいかに早く行うかが潰瘍性大腸炎と上手く付き合うコツとも考えています。
その他の免疫制御療法
G-CAP治療やステロイドが無効、あるいは再燃を繰り返し寛解の維持が困難な場合には病状や生活スタイル、挙児のご希望などを考慮しながら生物学的製剤(レミケード®、インフリキシマブBS®、ヒュミラ®、シンポニー®、エンタイビオ®、ステラーラ®、オンボー®)や免疫調節薬(アザニン®、ロイケリン®、プログラフ®)、インテグリン阻害剤(カログラ®)、JAK阻害剤(ゼルヤンツ®、ジセレカ®、リンヴォック®)などを検討します。治療法ごとの投与法や副作などをご説明し相談のうえで治療方針を決定していきましょう。
潰瘍性大腸炎の治療費について
潰瘍性大腸炎の治療費は、医療保険が適用されます。
病状が中等症以上の患者さんや、診察に一定の費用がかかる患者さんには難病支援制度による公的な援助があり、これを利用すると所得に応じて月に一定額以上かからないようになっています。
クローン病(CD)
クローン病とは、クローン病(Crohn’s disease:CD)とは、潰瘍性大腸炎と異なり大腸以外の口から肛門までどの部位の消化管でも生じる可能性がある慢性の腸炎です。病変は潰瘍性大腸炎と異なり連続性がなく多発することが多いですが、好発部位は肛門と回腸の終末部などです。またクローン病は潰瘍性大腸炎に比べて慢性炎症が胸管壁に深く生じるため、潰瘍性大腸炎にはあまりみられない症状を呈することがあります。
クローン病の症状
長く続く下痢、便切迫感、腹痛、重症になると発熱などを認めことがあるのは潰瘍性大腸炎と同様ですが必ずしも下痢を認めるわけではなく、このことがクローン病の患者さんが病識を持って頂きにくい原因ではと感じています。クローン病に特有の症状としては、クローン病の炎症が腸管壁に深くなると腸管が硬く狭くなり(狭窄)なり腸閉塞をきたすことがあります。またクローン病の炎症が腸管の外に波及して皮膚に繋がってしまい皮膚に生じた穴(外瘻)から便が漏れ出ることがあり、腸管と腸管がつながってしまい(内瘻)栄養が吸収できなくなってしまうことがあります。クローン病は肛門に好発しますので肛門痛、また肛門周囲に膿を生じることもあります。腸管以外の合併症として皮膚や目の病気を合併することがあります。
当クリニックでのクローン病患者さんの診察
病状の把握と副作用のチェックなどのため、診察の前に採血を受けて頂いています。採血結果は当日に出るシステムになっています。
調子が悪ければ治療の変更を検討するため、可能な限り速やかな日程で大腸カメラを行い病状を把握するよう努めています。再燃した場合はいかに早く大腸カメラで範囲や炎症の程度を把握し、いかに早く対応するかがクローン病を悪くさせないコツであると考えています。
安定した状態を維持できている患者さんへは、難病更新の時期にあわせて病状を把握するためとポリープやがんなどができていないかをチェックするため1年に1回大腸カメラを受けて頂くように推奨させて頂いています。また、潰瘍性大腸炎の患者さんとはお付き合いが長くなるため、他の臓器にも病気ができても早く対応できるよう1年に1回の胃カメラと腹部エコーも受けて頂くようお勧めしています。
クローン病の治療法
クローン病の治療は潰瘍性大腸炎の治療と同様に直接的に炎症を抑える5-アミノサリチル酸(5-ASA)から開始し、不十分ならば何らかの免疫を制御する治療が必要になります。潰瘍性大腸炎と同様に安全なもの、中止できるものを優先して行うようにしていますがクローン病は重篤な症状が様々であり、潰瘍性大腸炎に比して生物学的製剤などの治療を要することが多いです。
5-ASA製剤
クローン病の治療の基本は潰瘍性大腸炎同様に患部に直接作用して炎症を抑える5-アミノサリチル酸(5-ASA)にですがクローン病は小腸に病変を有することが多く、そのためクローン病に対する5-ASAはペンタサⓇのみとなります。クローン病を軽微な段階で発見できれば5-ASAで対応できることもあります。
ステロイド
ステロイドは炎症を抑える作用が速やかでクローン病に対して効果が高い治療です。その一方でステロイドを一旦開始してしまうと急には中止できず、その間にクセがついてしまうことあり、中止が難しくなり病状も難しくなることがしばしばあり(ステロイド依存性)、多くの副作用(骨粗しょう症、血糖値上昇、感染症)も出現します。ですので当クリニックではクローン病の患者さんへのステロイド投与は可能な限り短期間にするよう努めております。また最近は吸収されず血液中にステロイドが移行しないためクセになることが少なく副作用も少ないブデゾニド製剤経口剤(ゼンタコート®)が登場し回腸終末部~右側大腸の病変に限定して有効ですので、範囲の把握が大事になります。
血球成分除去療法
血球成分除去療法(G-CAP)は血液を腕の静脈から体外循環させてカラムの中で血液をろ過し、炎症の原因となる特定の血液成分(顆粒球・単球など)を除去することで効果を発揮する治療法で、薬剤を殆ど使わず強く免疫機能を抑制しない安全性の高い治療法です。1回の施行時間はおよそ1時間であり計10回(1週間に1~2回)行います。当クリニックではこの治療を可能な限り早期で軽微なうちに、場合によってはステロイドを投与する前の段階で行うようにしています。この治療をいかに早く行うかがクローン病と上手く付き合うコツとも考えています。
その他の免疫制御療法
G-CAP治療やステロイドが無効、あるいは再燃を繰り返し寛解の維持が困難な場合、状況的に重症度が高い場合などには病状や生活スタイル、挙児のご希望などを考慮しながら生物学的製剤(レミケード®、インフリキシマブBS®、ヒュミラ®、シンポニー®、エンタイビオ®、ステラーラ®、スキリージ®)や免疫調節薬(アザニン®、ロイケリン®)、低分子化合物(リンヴォック®)などを検討します。治療法ごとの投与法や副作などをご説明し相談のうえで治療方針を決定していきましょう。
クローン病の治療費について
クローン病の治療費は、医療保険が適用されます。
病状が中等症以上の患者さんや、診察に一定の費用がかかる患者さんには難病支援制度による公的な援助があり、これを利用すると所得に応じて月に一定額以上かからないようになっています。