症状がある患者さんへの当クリニックの診察

これから症状ごとに可能性のある病気や病態を挙げて参りますが、その前に…。どんな症状であっても症状がある時はまず緊急性がある病状の否定、次にがんを代表とする大きな病気の否定が最も大事になります。緊急性がある場合は、その日のうちに病院施設での入院が必要になることがあります。緊急性が必要な病状でないかどうか、また全身の状態の把握のためや症状の原因の臓器はどこかの推測のために当クリニックでは基本的な採血項目は当日速やかに結果が出るシステムを作っています。

便秘

何らかの原因で大腸に狭くなっている部位(狭窄)が生じ便秘するものと腸の動きが悪いため生じる便秘の、大きく分けて2つの原因があります。狭窄を生じる代表的疾患は大腸がんです。憩室という腸のくぼみがS状結腸という左下の大腸に多発し、炎症を繰り返し硬く狭くなり便秘になることもあります。しかし最も多いのは症状があるのに検査してみても見た目なにも病気がない、腸の動きが悪いため生じる弛緩性便秘の患者さんです。いつから便秘が続いているのかが大事ですが、緊急性や安全性を判断してから大腸カメラを受けて頂くことが望ましいと思います。

下痢

色々な病気が考えられる症状であると思いますがいつから症状があるか、血便やお腹の張った感じなどを伴うかが重要だと思います。お腹のかぜのような急性胃腸炎、お薬の副作用であること、腸の難病の潰瘍性大腸炎やクローン病などのことがあります。大腸がんは一般的には「便秘」を訴えられ受診される印象がありますが、中には大腸がんで腸が狭くなってしまい(狭窄)、便のやわらかい成分だけが大腸がんによって狭くなっている部位を通過し排泄され「下痢」と表現なさる患者さんもいらっしゃいます。大腸がんはお腹が張った感じを伴うことが多いので、そのようなことがあれば申し出て下さい。しかし、最も多いのは症状があるのに検査してみても見た目なにも病気がない過敏性腸症候群の患者さんです。緊急性がないか判断してから大腸カメラを受けましょう。病気があった患者さんはもちろん、症状が強くても何もなかった過敏性腸症候群の患者さんに対して「気のせい」にすることなく、ご希望があれば投薬を行います。

便に血が混ざる、血便が出る

大腸や小腸などの下部消化管から何らかの原因で出血している徴候です。多くは外来の対応で可能ですが緊急を要し入院を要する状況のこともあります。いつから症状があるかなどが重要だと思います。長く続く下痢を伴うことがあれば難病の潰瘍性大腸炎であることがあります。大腸がんは便に血が付くことで発症することがありますが、大腸ポリープも大きくなると同じような症状が出ることがあります。虚血性腸炎は便秘の方で腹痛後に血便がでることで受診なさることが多いです。その他、憩室という腸の小さなくぼみからの出血や痔、感染性の急性胃腸炎や高齢者ならば肛門のすぐ上の直腸潰瘍などでも血便がみられることがあります。診察して緊急性があと判断すれば入院施設のある病院をご紹介致しますが、そうでなければ早期に大腸カメラで検査致します。

胸やけ

一般的には胃酸や胃の内容物が食道に逆流するために起こる症状で、最も多いのは逆流性食道炎の患者さんです。しかし食道の動きの異常の病気(アカラシアなど)や食道がんなどで起こる食事のつかえを「胸やけ」と表現なさる患者さんもいらっしゃいます。以上のような病気でないか確認するため、胃カメラを受けて頂くようにしています。症状は強い場合は積極的に投与を行います。

みぞおちの痛み、もたれ

色々な病気が考えられる症状であると思いますがいつから症状があるか、食前か食後か食事に関係ないかが重要だと思います。胃潰瘍、十二指腸潰瘍、急性胃炎、胆石、総胆管結石、膵炎、お薬の副作用であること、悪性の病気ならば胃がんや膵臓がんのことがあります。海産物を摂取した後ならばアニサキスという寄生虫が胃の壁に食いついて痛みを訴えられることもあります。右の下腹の痛みが起こることで有名な盲腸炎(虫垂炎)も初期にはみぞおちの痛みを訴えます。しかし最も多いのは症状があるのに検査してみても見た目なにも病気がない機能性ディスペプシアの患者さんです。以上のような病気でないか確認するため、まずは緊急性があるかどうかを判断してから胃カメラや腹部エコーを受けましょう。病気があった患者さんはもちろん、症状が強くても見た目は何もなかった機能性ディスペプシアの患者さんに対して「気のせい」にすることなく、ご希望があれば投薬を行います。

食事や飲み物のつかえ感

胸やけと同様に胃の内容物が逆流することでこの症状を訴えて受診なさる逆流性食道炎の患者さんが多いですが、食道の動きの異常の病気(アカラシアなど)や食道がんなどで食事が病気の部位で詰まって起こるつかえ感のこともあります。以上のような病気でないか確認するため、胃カメラを受けて頂くようにしています。

のどの違和感

のどの違和感はかぜや耳鼻科領域の咽頭や喉頭の炎症やがんの患者さんでも訴えられますが、胸やけと同様に胃の内容物がのどにまで逆流して症状を訴えて受診なさる逆流性食道炎の患者さんがいらっしゃいます。かぜや咽喉頭の炎症が否定的ならば、胃カメラを受けて頂くようにしています。

右の肋骨の下の痛み

一般的には胆石にみられる症状です。右の結腸に便が貯留するなどでもこの辺りの腹痛を訴える患者さんもいらっしゃいます。また、よく診察してみると痛みの部位は肋骨の上で肋間神経痛や胸膜(肺を覆っている薄い膜)の炎症であったりすることもあります。採血で緊急性があるかどうかを判断してからまずは腹部エコーを受けて頂き、状況に応じて追加検査を検討しましょう。

嘔吐

消化管に原因がある場合と、そうでない場合があります。消化管の場合は逆流性食道炎、急性胃腸炎、弛緩性便秘などですが、特に緊急性を要する病気が腸閉塞です。また胃がんが大きくなって胃の出口が狭くなったり、食道がんのために食道が狭くなってしまい嘔吐を主訴に受診なさる患者さんもいらっしゃいます。他にも胆石や総胆管結石、消化器以外の病気では脳や心臓、耳の病気、尿路感染症などでも嘔吐をきたすことがあり、原因は多彩です。いつから嘔吐が生じたのかが重要ですが、状況に応じて採血や尿検査、レントゲンなどで緊急性や全身状態を把握し、緊急性がなければ胃カメラを受けて頂くことが望ましいと思います。

血を吐く、黒いものを吐く

胃や食道などの上部消化管から何らかの原因で出血している徴候ですが軽症の場合から緊急を要する場合ざまざまですが、一般的には胃潰瘍、十二指腸潰瘍のことが多く、他には急性胃炎、逆流性食道炎、胃がん、飲酒後や嘔吐後に食道や胃に起こる裂創(マロリー・ワイス症候群)、肝硬変に起因する胃・食道静脈瘤、他の臓器の病気に起因する胃の血管拡張などです。のどなどに一時的に軽い裂傷などを起こして胃カメラでみても何もないこともあります。診察して緊急性がある、あるいは重症であると判断すれば入院施設のある病院をご紹介致します。当クリニックで対応できそうであれば、早期を胃カメラを受けて頂くようにしています。

お腹が張った感じ

胃や腸にガスや内容物が貯留してお腹の張りを訴えられる場合と、臓器の外に液体が貯留し(腹水)お腹の張りを訴えられる場合があります。前者の原因として胃ならば胃がん、腸ならば腸閉塞、大腸がんなどがありますが、多くは機能性ディスペプシア、弛緩性便秘や過敏性腸症候群の見た目は何もない腸の機能性の病気です。後者の腹水が貯まってお腹が張ってしまう病気の原因としては肝硬変、胃がんなどの消化器のがん、卵巣がんなどの婦人科領域のがんなどです。採血やレントゲン、腹部エコーなどで緊急性があるかどうかを判断してから必要に応じて胃カメラや大腸カメラを受けて頂くことが望ましいと思います。病気があった患者さんはもちろん、症状が強くても何もなかった過敏性腸症候群の患者さんに対して「気のせい」にすることなく、ご希望があれば投薬を行います。

下腹の痛み

色々な病気が考えられる症状であると思いますが、いつから症状があるか、食前か食後か食事に関係ないかが重要だと思います。盲腸炎(虫垂炎)、腸閉塞、大腸がん、手術後の腸の癒着、大腸の憩室(腸の小さなくぼみ)の炎症、尿路結石、卵巣や子宮の病気などさまざまです。盲腸炎(虫垂炎)は右下腹部痛を呈することで有名ですが、その前にはみぞおちの痛みが出ることが多いので、そのようなことがあれば申し出てください。お若い患者さんであると難病であるクローン病のこともあります。しかし、最も多いのは症状があるのに検査してみても見た目なにも病気がない過敏性腸症候群の患者さんです。診察して緊急性がないか判断してから大腸カメラを受けて頂くことをお勧めします。盲腸炎や腸閉塞などで緊急性があると判断すれば入院施設のある病院をご紹介致します。病気があった患者さんはもちろん、症状が強くても何もなかった過敏性腸症候群の患者さんに対して「気のせい」にすることなく、ご希望があれば投薬を行います。

黒い便が出る

「血を吐く」の項と同様に胃や食道などの上部消化管から何らかの原因で出血している徴候です。軽症の場合から緊急を要する場合ざまざまですが、一般的には胃潰瘍、十二指腸潰瘍のことが多く、他には急性胃炎、逆流性食道炎、胃がん、飲酒後や嘔吐後に食道や胃に起こる裂創(マロリー・ワイス症候群)、肝硬変に起因する胃・食道静脈瘤、他の臓器の病気に起因する胃の血管拡張などです。お薬の影響や食事などの影響で便が黒くみえることもあります。診察して緊急性がある、あるいは重症であると判断すれば入院施設のある病院をご紹介致します。当クリニックで対応できそうであれば、早期の胃カメラをお勧めします。

肛門の痛み

痔のことが多いですが、難病のクローン病では好発部位の1つが肛門であり、これによる痛みのことがあります。また、肛門にがんができていることもあります。便秘で直腸に便が貯留し、肛門の違和感をおっしゃる患者さんもいらっしゃいます。列挙したような病気がないか、大腸カメラを受けましょう。

背中が痛い

お腹のうらの背部痛なら膵臓がん、腎臓結石、尿路結石、胸のうらの背部痛なら肺がんなどを否定しなければなりません。いつから症状があるかなどが重要だと思います。必要に応じて採血や腹部エコー、CTなどを受けましょう。

食欲がない

どの臓器の病気でも呈することがある症状です。胃などの消化管によることと、そうでないこともあります。病気の区分としてはがんであることと、そうでないこともあります。先ずは採血で全身状態を把握し、胃カメラや腹部エコーを受けましょう。異常がなければ状況に応じて追加の検査を受けましょう。

だるい、疲れやすい

どの臓器の病気でも呈することがある症状です。がんによる症状かどうかが大事であると思います。消化器の病気ならば肝炎や肝硬変などの肝臓の病気で訴えられることがあります。先ずは採血で全身状態を把握し、必要に応じて腹部エコーや胃カメラを受けましょう。異常がなければ状況に応じて追加の検査を受けましょう。

目や皮膚が黄色い

ビリルビンという体内の色素が上昇するために起こる症状で、ビリルビンが極度に上昇した段階で目や皮膚が黄色くなり、「黄疸」と言われています。治療を要すものであれば、肝臓が悪いため出現する黄疸、胆石が胆管に落ちた石(総胆管結石)や胆管を圧迫するがん(胆管がん、膵臓がん、胆のうがんなど)により胆汁という消化液がうっ滞して起こる黄疸などがあり、これらの場合は原則的に入院加療が必要です。しかし体質的にビリルビンだけが軽く高い方も多くいらっしゃいます(体質性黄疸)。このような方は疲れたりすると、よく見ると辛うじて黄疸がわかる程度の見た目を呈しますが、身体的には問題なく経過観察で大丈夫です。見た目の黄疸がわからず特に他にも症状などがなく、肝臓の機能は正常だけどビリルビンだけが少し高いため健診でひっかかった方などは放置可能な体質性黄疸の方がほとんどです。黄疸がみられたり、ビリルビンの高値を指摘されれば問題になる原因の病気がないか採血による精密検査を行い腹部エコーを行いましょう。